第一回 機動戦士ガンダム0083編

 
ガンダムへのイチャモンコーナー、今回は第一回目として、0083スターダストメモリー(以下0083)を取り上げたいと思います。

 

1.0083登場のモビルスーツ群について

0083にてメカデザインに参加したカトキハジメ氏が、デンドロビウムのことを「オーパーツ」と表現されていましたが、なにもデンドロビウムに限らず、0083登場のモビルスーツは、どう考えてもその時代に存在するとは思えない、それこそ「オーパーツ」のオンパレードであります。

まずは、下表に各時代の代表的なモビルスーツと、その性能を示しました。

 

表1.モビルスーツの性能比較

時代(U.C)
モビルスーツ名
ジェネレータ出力
総スラスター推力
本体重量
1t当たりのスラスター推力
0079 
RX−78 ガンダム
1380kw 
55500kg 
43.4t 
1279kg
0083
RX−78GP01Fb
2045kw
234000kg
43.2t
5417kg
0083
RX−78GP03ステイメン
2000kw
188000kg
41.6t
4519kg
0087 
RX−178ガンダムmk2
1930kw 
81200kg 
33.4t 
2431kg
0087 
MSZ−006 Zガンダム
2020kw 
112600kg 
28.7t 
3923kg
0088
MSZ−010 ZZガンダム
7340kw 
101000kg 
32.7t 
3089kg
0093 
RX−93 νガンダム
2980kw 
97800kg 
27.9t 
3505kg
0123 
F−91
4250kw 
88400kg 
7.8t 
11333kg
0153 
LM312V04 Vガンダム 
4780kw 
79640kg 
7.6t 
10479kg
0153 
LM314V21 V2ガンダム 
7510kw 
ミノフスキードライブ
11.5t 
算出不可
(パワーウエイトレシオの算出法においては異論もあるかと思いますが、目安程度にご覧頂きたく。)

 

上記において0083当時の2機種が、運動性はともかく、機動性においては実にU.C.90年代のνガンダムをも圧倒しているという事実がお解かりかと思います。

ジェネレータの出力においても、4年後のmk2やZガンダムに全く引けをとらず、一年戦争の暫後に作られたモビルスーツにしては、驚異的な高性能を誇っています。

総スラスター推力は全時代を通じてぶっちぎりです。

要は性能の設定を高めにしすぎちゃった、ちゅうことでしょうか。

スペックを見る限り、mk2やZガンダムよりもGP01や03の方がはっきり言って強いのです。0083当時でこれだけの性能をもったモビルスーツを作りながら、0087で何故技術がダウンしちゃってるのでしょうか。妙な逆鞘が発生しています。

 

2.アナハイムエレクトロニクス社の扱いについて

 
今度は、0083におけるアナハイムエレクトロニクス社の扱いについて取り上げてみます。

その前に、「Zガンダム」0087当時のアナハイム社の状況について、確認したいと思います。

一年戦争終了後、旧公国軍系のジオニック社等を吸収して最大のMS製造会社となったアナハイムエレクトロニクス社は、地球連邦にハイザック、ガルバルディβなどのMSを供給し、その地位を確立していました。しかし、連邦がティターンズに主導権を握られ、アースノイド至上主義を取るようになると、アナハイム代表メラニー・ヒュー・カーバインはこの状況を憂慮し、シャア・アズナブルより供給を受けた技術で以って反地球連邦組織エゥーゴへの軍事協力を始めます。

当時アナハイムの主流となっていた技術は、当然の如く旧公国軍系のものであり、連邦系のMSはジム系のOEM生産にとどまっていたので、連邦の最新技術は入手が困難だったわけです。この事からアナハイム社はガンダム系の連邦新鋭技術を入手できる立場に無く、連邦政府や反対勢力を手玉に取るような行為は(資金的、政治的にはともかく)技術的には難しかったはずです。この状況を打破する革新的な事件が、「Zガンダム」のオープニングストーリー、カミーユ・ビダンによる「ガンダムmk2強奪事件」でした。

カミーユ・ビダンとエゥーゴ特殊部隊の功績により、ムーバブル・フレーム等の連邦最新技術を内包した「ガンダムmk2」はアナハイムに貴重な研究資料として届けられ、連邦系、ジオン系双方の技術を吸収したアナハイム社は以後一大コングロマリットとして成長のきっかけを得る事になります。

この後、アナハイムは連邦軍とその反対勢力に巧みにMSの供給を行う事により、莫大な利益を上げていく事になります。その萌芽は、ティターンズへのマラサイ譲渡等に見られる事が出来ますが、この時は洗練された策謀というよりは、ティターンズからエゥーゴ協力への嫌疑を晴らすため、あたふたと行った印象が拭えず、後年の傲慢なアナハイム社像からはかけ離れた初々しさが感じられます。

アナハイムの更なる成長を促した「ガンダムmk2強奪事件」は、その後に与えた影響を考え、「カミーユ・ビダン」の名前とともにU.C.史に残る重大事となりました。カミーユの父母、フランクリンとヒルダは、この間のエゥーゴとティターンズの抗争に巻き込まれて死亡していますが、カミーユの歴史に残した足跡の大きさを勘案すれば、そのような悲劇が発生してしまったのも、むべなるかな、といった感がありました。

こ・れ・が・で・す・ね。0083のストーリーを飲み込むとですね。なんと、「Zガンダム」でカミーユの活躍により実現したはずの事項が、この年代でバンバン発生しちゃってるのですよ。

まず連邦軍は「新鋭兵器」ガンダムの開発、製造を、なんとアナハイムに依頼。当然連邦の技術者も開発に参加し、アナハイム社と連邦技術者の技術交流が行われてしまいます。

アナハイムの技術力をもってすれば、0083時に連邦の新鋭技術と接触していたのであれば、0087当時には独力でムーバブルフレームの開発も可能だったでしょう。「Zプロジェクト」だってそれ程遅延せずに、ZガンダムやZZガンダムなどのMSも次々と生まれていたに違いありません。0083のストーリーを鵜呑みにするならば、カミーユはあんなに苦労して(父母まで失って)mk2を強奪する必要はさらさらなかったのです。アイディアさえ提供されれば、ZだろうがZZだろうがアナハイムは開発可能だったと思われます。フランクリンもヒルダもはっきり言ってムダ死にです。

さらには、連邦敵対勢力であるデラーズフリートに対し、老獪にも製作途上のガンダムタイプMSを、外観を変えて譲渡しています。その両勢力を手玉に取る手腕たるや誠に堂に入ったもので、4年後に見せるティターンズへの対応の未熟ぶりからは想像もつきません。

こういうテクニックはカミーユのmk2強奪以後、技術的に優位に立ったアナハイムが徐々に身につけていったものと認識していたのですが、0083を見る限りそうとは言えないようです。

3.結論

0083のこうした矛盾点は、後に詳細な設定が必要となる時にやはりネックとなるらしく、プラモデルの「マスターグレード・ガンダムmk2」の解説書の中でも結構苦しい説明がなされています。

「0083当時にGPシリーズで開発された技術の研究継続と、それを応用したMSの発表を行った場合、アナハイム社は連邦政府に莫大な違約金を払わなければならない。」

ってやつです。こうやってカミーユの行ったガンダムmk2の強奪が無駄にならないように、設定にリセットをかける必要が生じているのです。

0083は、”「ファースト」と「Z」の7年間のミッシングリンクを繋ぐ”との謳い文句で登場しましたが、当時としては開発不可能と思われる数々の「オーパーツ」兵器を生み出し、さらには「Z」との繋がりにおいて重大な設定ミスを犯しています。

ガンダムには数々の後付けストーリーがあり、その度に矛盾が出る事はいたしかたのない事なのですが、基本設定にここまで支障を来たす後付けストーリーというのも、珍しいものがあります。これらのことは、ひとえに製作側(監督や脚本家)のガンダムストーリーの不勉強から来るものであり、「ファースト」と「Z」の設定資料をじっくり検分しておれば、犯す事のない誤りだと思えます。今後もガンダムにはさまざまなサイドストーリーが設けられ、新しい設定も増えていく事でしょうが、サンライズが後で整合性を取るのに四苦八苦するようなストーリーは、今後は作られていって欲しくないです。

 

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