電子ゲーム機技術の最高峰 「トミー 3D立体グラフィックゲーム シャーマンアタック」

 1984年、3D立体グラフィックゲームのラインナップにおいて、電子ゲーム機技術の最高峰とも言うべきゲームが登場した。
それが、「ドッグファイト」「シャーマンアタック」の2作品である。

 どこが最高峰かというと、まず、カラー液晶を採用している。これだけなら、それまでの3D立体グラフィックシリーズと変わりないのだが、なんと、このゲームには液晶表示とは別に、背景表示がなされていたのである。当然背景表示も3D化されており、ゲーム画面とは別に完成度の高い絵が拝めた。

 で、ゲーム画面と背景画面をどう処理していたかというと、ハーフミラーを使ってカラー液晶画面を背景画面に重ね合わせ、同時に表示するというテクニックを使用していたのであった。

ハーフミラーを使っての画面合成は、アーケードゲーム等にも使用されていた高度な技術で、これを家庭用の、しかも3Dゲーム機に持ち込むというところになんとも凄みを感じたものである。

 さらに、このゲームのすごい所は、効果音がステレオサウンド化されていたという事である。
戦車や戦闘機が右へ左へ移動すると、そのまま効果音も右へ左へ移動する。これによって、画像だけでなく、音声においても立体的な効果が得られ、電子ゲーム機の中でも様々な技術を盛り込んだ完成度の高いマシンに仕上がっていた。

 残念ながらこの電子ゲーム機には一つ欠点がある。それは、「ドッグファイト」と「シャーマンアタック」が全く同じゲーム内容だ、というところである。背景絵と自機がそれぞれ戦闘機戦と戦車戦に代えられているだけで、内容は全く変わらない。

 自分がこのゲームを買ってもらったのは小学5年生の時で、祖母の実家の山形県に祖父母と旅行した折、福井に戻るときに山形駅前のデパートで買ってもらえたものである。すでに「スペースレーザーウォー」購入済みで、3D立体ゲームの手の内は分かっていたつもりだったが、背景絵とゲーム画面の合成という新手には心底驚き、すぐさま欲しいと相成った。

 まあ孫には甘い祖父祖母だったので、ゲーム機を買うこと自体はすぐOKが出たのだが、問題は「ドッグファイト」「シャーマンアタック」のどちらを買うか、という事である。

 ゲーム内容は全く同一なので、どっちでも同じやん、という話なのだが、逆に同じであるだけ、どっちを買うか判断に迷った。相当時間迷ったと思うのだが、最終的にはシャーマンアタックに決定。なんでかというと、背景が空と雲しかないドッグファイトより、いろんなオブジェクトが背景に置いてあるシャーマンアタックの方が、より立体視を楽しめるのではないか、というまたもや身も蓋もない結論。

 今から考えると、抜けるような青空と美しい田園地帯で複葉機が縦横に活躍するドッグファイトの方が、美麗さという点では上かなあ、とも思うのだが、立体視の迫力は、シャーマンアタックの方が上かも知れない。

下記に左右の背景画面を載せるので、これまた交差法で立体視していただきたい。
あと、電源投入時の全キャラ表示。これも左右を表示したので、交差法立体視に挑戦してください。
 

 

 ゲームシステムは、道の上を戦車が走っていくので、(自機の戦車には後ろに黄色い旗が立っている)敵の戦車の後ろに回りこんで追い掛け回す。敵の後ろにスリップストリーム状態で追い回す事になると、自動的に砲撃を始めるので、しばらくお尻をつつきまわせば、敵戦車は破壊されて爆発する。

 逆に、敵の戦車に自分の後ろへ回りこまれると、敵戦車の砲撃が始まるので、それを振り切らなければこっちが爆破されて一機死亡となる。

道には土嚢が置かれており、そこで道が分岐している。戦車は、通常は円周ループをぐるぐる回ってるだけなのだが、ここで進路変更ボタンを押すと、枝分かれしたバイパスに避難する事ができ、本線に戻るまでに敵戦車を遣り過ごして、逆にこちらが後ろに回りこむことも可能である。
 道路自体は、無限ループの8の字型になっており、進路変更ボタンによって行き先は変化する。

ゲーム画面

 戦車の進路変更と、アクセルボタンを加減して、敵の後ろに回りこみ、次々と戦車を撃破して点数を稼ぐという内容。
ちなみに、道路は8の字の部分の上から2分の1強しかゲーム画面には見えておらず、残り2分の1弱は、自分の視界の裏側に回りこんでいる、という設定である。その間もステレオ音源による自機戦車の走行音は聞こえているので、だいたいの位置はつかめるのだが。

 ちなみに、それぞれの道路は一車線で、敵の戦車を追い越したり追い越されたりは原則として出来ないのだが、自分の視界の裏側に回りこんで、戦車が見えていない時は、追い越しも追い越されも可能である。だから、視界に回りこむ前に敵戦車に追い回されていても、アクセルを緩めてわざと敵機を自分の前に出し、次に画面に登場する頃には、逆に自分が追い回しているというテクニックも使えた。

当時の状況、電子ゲーム最後の煌めき

 1984年には、いよいよファミコンが登場し、TVゲーム機の全盛時代を築く。その前年の1983年は、電子ゲーム機最後の煌めきを見せる、多機能かつ斬新なアイデアの作品が巷に氾濫していた。このシャーマンアタックは、トミーの電子ゲーム機技術渾身の一作で、ゲームとしての完成度、そのコンセプトの斬新さ、多機能ぶり、いずれも群を抜く出来栄えだった。

 シャーマンアタックのみならず、この時期の電子ゲーム機は、各メーカー工夫をこらした秀逸なものが多い。FL管にしろ、携帯型の液晶表示にしろ、どれもそれ以前の数年間の技術の粋を結集した佳作名作が多かった。
やがてTVゲーム機によって市場は駆逐されてしまうのではあるが、当時の子供達だった自分としては、各メーカーで工夫をこらしていた玩具メーカーの開発者に、感謝の意で頭を垂れたい気持ちで一杯である。
 
 
 

写真追加!! TANDY製「SKY DUEL」(トミーのOEM品、「ドッグファイト」の海外販売版)入手!(2013.11.16)

ヤフオクで落札してしまった(笑)。海外玩具メーカTANDYの発売だが、トミーのOEM品で、モノは全く「ドッグファイト」そのもの。裏面には、”MADE IN JAPAN”の銘があり、シール類がTANDY関係に貼り替えられている。

 

ゲーム内容や効果音、音楽などは「シャーマンアタック」と同一で、同じプログラムを使いまわしているだけなのがよく分かる。

交差法立体視で見れます、背景とキャラ。
 

 
 

ゲーム中の画面。
 
 

電子ゲームメインページに戻る。