Yancy Korossy(ヤンシ−・キョロシー)。このルーマニア出身のピアニストのアルバムを初めて耳にしたときの衝撃は、今でも忘れられません。タイトなリズムワーク、ブロックコードを多用した攻撃的なアドリブのスタイル、深い陰影を覗かせるダークな音色。それらはどれをとっても僕の理想をほぼ完璧に満たすものでした。都内の某有名中古CDショップでたまたまかかっていたものでしたが、カウンターにダッシュして「今かかっているの下さい!!」と、迷わずこのアルバムをゲットしたほどです。 当時(1960年代)の東欧共産圏に於いて、どのような形でJAZZが流通していたか、詳しいことは不明ですが、それほど多くの情報量は無かったのではないかと推測されます。そんな逆境の状況が、良い意味で誰からも影響を受けていない、Korossy独自のスタイルを作り上げたのでしょう。タイトルにも、そんな意味が込められているのだと、僕は解釈します。 彼の音楽に惹かれて、現在CDで発売されている彼の音源をいくつか聴いてみましたが、残念ながらこの作品ほどのエネルギーと独創性を持ち合わせたものには、未だ巡り合えていません。 かつては幻と言われ、マニアの間で高値で取り引きされていたというこのアルバムも、1998年にCDとして再発されたことにより、現在ではかなり入手し易くなりました。 これを聴いて、世の中には日の目を見ずに埋もれてしまっている良い作品が山の様にあることを認識して頂ければ幸いです。そして僕は、そんな作品たちに今後ともスポットライトを当て続けていきたいと思っています。
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