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The dolphin
Last Update:03/30(水) 00:12

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リーダーStan Getz
リーダー楽器テナー.S
形態カルテット
場所海外
レーベルConcord
録音年代80年代
メンバーLou Levy(p) Monty Budwig(b) Victor Lewis(ds)
曲目@The dolphin AA time for love BJoy spring CMy old flame DThe night has thousand eyes EClose enough for love
解説者なおき
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写真・画像など1112109149.jpg


 ▼Comment
Stan Getzというテナープレイヤーは、その長い活動期間の中において、殆ど駄作を残すことの無かった、類稀なる天才だったと言えるでしょう。50年代前半の名盤“Stan Getz Plays”、60年代にボサノバブームを巻き起こした“Getz Gilberto”、ピアノにChick Coreaを迎えて新たな方向性を打ち出した“Sweet rain”など、僕自身も様々な時期における彼の名盤たちを愛聴しています。スタイルの変遷こそありましたが、溢れ出んばかりの歌心とクールな精神は常に変わらず彼の音楽の中心にあり、Getz独自の世界観を支え続けてきました。常に最高の演奏を我々に聴かせ続けてくれたGetzですが、個人的な意見を言わせて貰えば、そんな彼の生涯において、最期の十年位の演奏というのはちょっと別格なのではないかと思います。
80年頃より以前のGetzは僕にとって、顔色ひとつ変えず、ちょっと感情を抑えてクールにさらっと吹きこなしている、というような印象があるのです。どれだけ熱いブロウをしていても、どこか本心を曝け出していないような感覚。でも最期の十年位はちょっとそれまでとは雰囲気が違います。今まで抑えていた内面的な感情のようなものが、一音一音の中にはっきりと読み取れるように思えるのです。テナーの音の背景から伝わってくるメッセージの種類が、僕にとってはそれ以前と明らかに違ってきています。
Getz最期の十年のスタートラインとでも言うべき作品が、今回のテーマ“The dolphin”です。とにかく印象的なのは、青く澄んだ海の中をイルカが自由に泳ぎまわっているイメージを喚起させる、流麗で美しいボサノバの@。淀み無いフレーズながら一音一音に重みがあり、サウンドの後ろ側に圧倒的なストーリー性が感じられます。晩年にようやく見せた人間臭さが、元々あった歌心とテクニックに更に深みを加え、彼の音楽をより味わい深いものに熟成させていった成果ともいえるでしょう。その他にも切々と歌い上げられたバラードのA、いかにも白人らしい小粋なサウンドが光るB、数々のテナーの巨人たちに愛されたスタンダードのDなど、選曲・メンバー・演奏すべての面で内容が非常に優れており、Getzの晩年の代表作と言えるでしょう。
好演ながら非常にリラックスして聴ける一枚です。

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Pass:
Miniりすと v4.01