VENUSというレーベルは、「地味だけど良い盤」が上手くツボにはまると、なかなか威力のあるレーベルだと思います。以前ご紹介したBill Crowの“From Birdland to Broadway”などが良い例ですが、まったりとその空間に溶け込むような独特の心地よさがあります。技巧的に物凄く優れているとか、何か特筆すべき特徴があると言ったわけではないけれど、きちんと押さえるべきところを押さえて、高いレベルで纏め上げている。日常のリラックスした時間の中で聴くには、こういう盤は凄く重要だと感じることが多々あります。 今回取り上げるのは、そんなVENUSレーベルから2004年にリリースされた鳥尾さんというグループの“Be bop”という作品です。日本人女性3人によるピアノトリオなのですが、コミカルなバンド名とは裏腹に、その演奏は至って正統派のバップ・スタイル。若干「大学のJAZZ研」的テイストが漂ってくるような気もしなくはありませんが、基本的にはこの文章の冒頭で書かれているような内容をよく消化した、なかなか良いバンドだと感じます。 僕の場合は、AやBのようなベタなブルースを結構聴かせる演奏にまとめているところでまず関心を惹かれ、よく歌えているCあたりで完全に当たり盤であることを認識しました。(Cは哀愁漂う美しいコード進行が素晴らしい、個人的に大好きなスタンダードです)その他だとFあたりが聴きどころであると思いますが、基本的にハズレテイクのないクォリティの高い演奏内容です。 マイルスやコルトレーンなどの巨匠たちがちょっとクセのある高級ワインだとするならば、これらの作品は手頃だけれど飲みやすくて美味い上質なテーブルワイン。日常生活に華を添える音楽にはぴったりなのではないでしょうか。
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