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What is this thing called love?
Last Update:05/16(月) 22:48

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リーダーRichie Beirach
リーダー楽器ピアノ
形態トリオ
場所海外
レーベルVenus
録音年代90年代
メンバーGeorge Mraz(b) Billy Hart(ds)
曲目@What Is This Thing Called Love? ALeaving BNight And Day CGoodbye DAutumn Leaves EAll The Things You Are FPinocchio GOh, What A Beautiful Morning HNardis IOn Green Dolphin Street
解説者なおき
★購入・試聴はこちら★What is this thing called love
写真・画像など1104329045.jpg


 ▼Comment
主題の解体と再構築。これはJAZZという音楽の持つひとつの命題であり、且つその快楽の根源となる大きな要素です。Richie Beirachというピアニストが作り出す音楽は、そのことを改めて我々に認識させてくれます。
このアルバムに収められている曲の大半は、セッション等でもお馴染みの非常に有名なスタンダードばかり。Beirachはその類稀なるハーモニーセンスによって、これらの素材を見事にリフォームしていきます。インとアウトを小刻みに繰り返し、細分化されたハーモニー。リハーモナイズによって不安定さと違和感を感じさせながらも、行き先には迷いのない一本の道筋が通っていて、メロディーラインはそこをゴリゴリと突き進んでいきます。その演奏はシックで繊細な表情を持ちながら、且つパワフルでワイルド。抽象的でありながら総体として感じさせる圧倒的な安定感。その究極の二律背反こそがBeirachの追求する美学なのではないかと感じます。
結晶の如く硬質で透明感のある美しい音色や、伸びやかにフレーズを歌い上げるセンス、音楽的な構成力も申し分なく、理論・技術・歌心と、あらゆる側面から見て非常に優れたピアニストであると言えるでしょう。
アルバム全体の構成は、リハモできっちり料理されたスタンダードの間に、ACEのような耽美的なバラードがバランス良く配されており、ハイレベルな演奏ながら非常に聴き易い内容。特にWayne ShorterのFはBeirachのカラーに合っていて素晴らしい選曲センスだと思います。またデビュー以来の愛奏曲であるBill EvansのHも、独特のアレンジと構成力が光る好演です。
Beirachの原点はクラシックピアノとEvansだと言われていますが、彼の場合は影響されたものに染まることなく、それを見事に昇華させ、自己の世界観やスタイルを確立しています。時代に流されないその普遍的な演奏は、一聴の価値ありです。

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Pass:
Miniりすと v4.01