「北欧は神話の国である」とよく言われます。そういった観点から見ると、Lars Janssonの作り上げる音楽は、非常に北欧人らしい、神話的な世界観を持ったものだという印象を受けます。 Lars Janssonのサウンドには、「狭い階段を下っていった先の、薄暗いライブハウスで黒人ピアニストが背中を丸め、バーボン片手にブルースを…」、といった風情ではまるでないのです。そこにあるのは、青く広い空や、大地、山々など、大らかでときに厳しい自然、そしてそれらを司る、さらに大きな何かへの畏敬の念や礼賛の精神です。 彼の紡ぐ旋律の一つ一つが言葉となり、情景となり、我々の心の奥深いところにダイレクトに入り込んできます。その中にある壮大な物語性や精神性は、音楽やJAZZという言葉の範疇を越え、まさに北欧神話の世界観そのものを描き出していると言えるでしょう。 今回はそんなLarsが来日時に吹き込んだライブの名盤、“At ease”をご紹介します。これはスカンジナビアン・コネクションと題し、北欧の名手を招いて国内でライブを行うシリーズの一回を収録したもので、ファンの間でもその完成度は高く評価されています。 しっとりと落ち着いたマイナー調の佳作@に始まり、縦のラインのグルーヴが心地よいA、崇高なイメージのバラードのBF、圧倒的なカオスに身を任せることのできるGなど、Larsは高い表現力と多彩な表情を持ったプレイを展開していきます。 一段高みに昇ったプレイヤーが、ピアノトリオというフォーマットで語り尽くす現代の北欧神話の世界。皆さんはどんな物語を、彼のサウンドの中に見出すでしょうか?
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