JAZZミュージシャンとして間違いなくトップクラスの才能と実力を持ち合わせながら、華やかな表舞台へ登る機会に恵まれないままこの世を去った非運のトランペッター、Wooy Shaw。活動時期が、ストレートなJAZZが完全に主流から外れてしまった70〜80年代であったことと、これといったリーダー作に恵まれなかったこともあいまって、日本では「知る人ぞ知る名手」といったような位置づけにありますが、本来であれば彼は、Clifford BrownやLee Morgun、Freddie Hubbardなどの偉大なトランペッター達と同等に扱われてもおかしくないほどの逸材であったと僕は思います。今回はそんなShawのカラーが色濃く反映された代表作、“Moontrane”をお題にしてみましょう。 Shawは弾け飛ぶ様に勢いが良く、スケールの大きい演奏が出来る一方で、演奏に全く雑な所が無く、バッキングなどの抑えたプレイの中にも品の良さと重厚感があるところが素晴らしいなあと感じます。このアルバムでは吹いていませんが、フリューゲルホルンの演奏も得意なようで、その柔らかく深みのある音色には、どこか惹き込まれるような魅力があります。コルトレーンに捧げられたタイトル曲“Moontrane”は、Shawが18歳の時に作曲し、生涯に渡って演奏し続けた彼のテーマソングとも言える名曲。いかにも新主流派的でモーダルなコード進行に、美しいメロディーラインが乗って、印象深い一曲です。他にも短いテーマのリフから一気に熱いソロへ雪崩れ込むB、Shawの落ち着いた丁寧なプレイが堪能できるCDなど、アルバム全体を通して質の高い仕上がりとなっています。 この一枚を聴くだけでも、彼が作り上げた確固たる自己のスタイルと理論、そしてトランペッターとしての高い技量を感じ取ることが出来ると思います。Wooy Shawという人間を知る上では欠かせない一枚と言えるでしょう。リーダー作以外にもLarry young(org)の“Unity”やJackie McLean(as)の“Demon’s dance”などの作品で主役を食わんばかりの好演を繰り広げていますので、そちらにも是非ご注目下さい。
|
|