このコーナーでベスト盤をオススメするのは、ちょっと自分のやり方に合わないような気もしますが、Richad Gallianoの多彩な音楽性について語る素材としては、このベスト盤が最も適しているようなので、今回は敢えて彼のベスト盤、“Gallianissimo!”について書いてみたいと思います。 JAZZ界唯一(と言ってしまっても過言ではないでしょう)のアコーディオン・プレイヤー、Richad Galliano。彼はアコーディオンという楽器の特性を最大限に活かし、様々なジャンルの音楽の要素を取り込んだ、多国籍と言うか無国籍と言うか、なんとも不思議な世界を作り出します。音楽性のベースはJAZZに置いているようではありますが、時にピアソラ風であり、時にはシャンソンのようであり、そして時にヨーロッパ映画のサントラのようである。前述の他にも、彼の音楽の中にはスパニッシュやラテン、伝統的なクラシックなど、様々なジャンルの要素が同時多発的に表現されており、非常に奥深い作品構成となっています。このアルバムを聴いていると、まるで欧州各国の音楽を巡礼して回っているかのような印象を受けます。 ちょっと堅苦しい前置きになりましたが、結局のところGallianoの凄さというのは、上記のような手の込んだ音楽性になっているにも拘らず、彼の音楽の中には、そのモチーフとなった音楽が持つ、土着的な泥臭さや激しさなどが全く損なわれずに表現されているところにあると思います。あのアコーディオン特有の、哀愁に満ちた悲しげな音色で饒舌に歌い上げられるメロディーラインを聴いていると、悲しみとか、懐かしさとか、憧れとか、様々な要素が入り混じった複雑な感情が、何故か自然と湧き出してきます。 彼のように、ジャンルにとらわれず、音楽の持つ本質的な力みたいなものを追求できるミュージシャンというのは非常に稀な存在。「普通のJAZZだけじゃ物足りない!」という方や、本当の意味で音楽に造詣の深い方には、かなり楽しめる一枚であると思います。
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