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Night and the city
Last Update:01/24(土) 14:30

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リーダーCharlie Haden / Kenny Barron
リーダー楽器ベース
形態デュオ
場所海外
レーベルVerve
録音年代90年代
曲目@Twilight Song AFor Heaven's Sake BSpring Is Here CBody And Soul DYou Don't know what love is EWaltz for Ruth FThe Very Thought Of You
解説者なおき
写真・画像など1074873230.jpg


 ▼Comment
先日、BN東京でKenny Barron(p)とCharlie Haden(b)のデュオを聴いてきました。物静かなステージながら、2人の間に流れる微妙な空気の震えのひとつひとつまでもが伝わってきそうな、素晴らしい内容の演奏。本当に感動しました。今回はこの2人のデュオアルバム“Night and the city”をお題にして、彼らの音楽について思うところ述べてみようかと思います。
最近Charlie Hadenの音楽を聴いていて良く思うのは、「彼の表現手法というのは、まるで水墨画のようである」ということ。速いパッセージや特殊な技巧など全く使わず、独特なタイム感から来る絶妙な間と、それにより発生するオープンなスペースを最大限に利用し、聴き手のイマジネーションを喚起する彼の演奏スタイルと、黒一色の濃淡とデフォルメされた構図の中に、特徴的な点や線を配することにより、見る者のイマジネーションを掻き立て、何も無いスペースの中に何かを見出させる、水墨画の世界というのは、どこかしら似通った部分があるように思えます。決して難しいことをしているわけではないのですが、その一見シンプルな構成やフレーズ、音色の中に底知れない深遠さを感じ取ることが出来ます。そう考えるとBarronはHadenが描いた墨絵の下地の上に、水彩のような淡く、やわらかな色をのせていく役割といったところでしょうか。このBarronのプレイも饒舌過ぎず、しかしまた地味すぎず、絶妙のバランス感覚を保っています。いかにも職人気質の彼らしい演奏です。
この二人のデュオは、ある種の絵画のように、遠くから全体を眺めて楽しむのが良いように思えます。その中で一瞬ふっと細部に強く引き込まれ、また全体像に戻っていく。アルバム一枚を通して、そんな独特の流れが感じ取れます。ただ単に耳で聴くというだけでなく、その場に作り出される空間の雰囲気とか、時間の流れのようなものも含めて、体全体で堪能していただきたい一枚です。

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Miniりすと v4.01