「次世代の主流を担えるような、若手期待のテナーといえば誰?」と訊かれたら、皆さんは誰の名前を挙げるでしょう?デビュー時から大物振りを遺憾なく発揮してきたJoshua Redmanでしょうか?それともここ数年人気急上昇のEric Alexander?Chris PotterやMark Shim、Seamus Blakeあたりも悪くないですね。 さてそんな中、穴党の僕が密かに期待を寄せているのが、今回ご紹介するJames Carterです。上記のプレイヤー達も充分に魅力的な存在ではありますが、Carterは彼らには無い大きな魅力を持ち合わせていると僕は感じています。Carterだけが持つ独特の大きな魅力、それはとにかく破天荒な彼の暴れっぷりと、そこから生まれてくる強烈な個性です。 指は回るしフラジオもかなり高音域まで出せるとあって、テクニックを最大限に駆使しまくり、過剰なまでにハードなアドリブを展開していくCarter。一見非常に斬新なプレイヤーなのかと思われがちですが、よく聴いてみると、音色は野太くダークで艶があり、Ben Websterあたりを思わせるようなトラディショナルな響きをしています。また、その過激な音楽性やマルチリード奏者という点などから、Rorand KirkやEric Dolphyなどの影を色濃く感じられる部分も多くあります。そんなところからも、ぱっと聴いた時の印象とは裏腹に、このJames Carterという人が、実は先人達の長所を上手く取り込んで踏襲していっているタイプのプレイヤーであることが良くわかります。 今回のテーマである“Jurassic Classics”は、そんな彼の「踏襲と破壊」の二面性がよく表れた1枚です。@やFは、古典的な素材をこれでもかといったくらいにブチ壊して料理した「破壊」の典型。逆にEのブルースなどはトラディショナルながら歌心と面白味のある仕上がりになっています。この対比が作品の聴きどころであります。こういう演奏ができる若手のテナーは、なかなか今いないのではないでしょうか?個人的なお気に入りはソプラノで心地良く歌い上げられているA。 混迷を極める現代の若手テナーシーンにおいて、ひたすら異色の輝きを放つ隠れた実力派プレイヤーJames Carter。全く先読みのきかない混戦を制すのは、案外こんなダークホースなのかもしれません。
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