Sonny Criss(as)は僕にとって、「あんまり公表してないんですけど、実は密かに愛聴してます」的なミュージシャンの代表格(笑)今回はそんな彼のアルバムの中でも一番親しみ易い“Up up and away”を取り上げてみたいと思います。 身が詰まってプリプリしている音色ながら、その内面になんとも言えなく暗い陰を抱えているCrissのアルト。多少演歌的な要素はあるものの、その陰がAのようなブルースフィーリングの強い曲や、BCのような哀愁漂う曲に非常に良く映えます。一方明るくポップなタイトル曲の@では、Phill Woodsを髣髴とさせるようなエネルギッシュなソロを披露していて、なかなか多彩な表情を覗かせています。サイドでは、ギターのTal Farlowの参加がサウンドに新鮮味を加えていて、非常に効果的。インテリアとして置いておきたくなるような、お洒落なジャケットも、このアルバムのもう一つの大きな魅力でしょう。 生き方に不器用で、生涯に渡りかなりの苦労人だったというCriss。(彼の人生は、未だ謎の多いピストル自殺によって幕を閉じます。)彼の音が抱える陰というのは、そういった体験の中から自然と滲み出てきた深みの部分のように思えます。僕たちはきっとそこに、「もののあはれ」とでも言うような、(日本人特有の)特別な感情を見出しているのではないでしょうか。いかにも中堅どころという感じの地味な位置付けにありながらも、日本に根強いファンが多いということも、そう考えると納得がいきます。 日本文学(古典に限らず)なんかが好きな方に聴いて頂きたい作品です。
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