「Terrassonはここを境に化けた!」このアルバムを初めて聴いた時の僕の率直な感想です。以前にレビューで取り上げたStefano di Battistaのアルバムで彼の好演を聴いて以来、気になってマメにチェックしていたピアニストではあったのですが、今回の作品は、以前に発表した作品とは比べ物にならないほど完成度が高いものとなっています。 演奏の裏側に底知れぬカオスと破綻を感じさせるところがTerrassonの作品の大きな魅力ですが、前までの作品ではそれが小難し過ぎてわかりにくいきらいがありました。しかし今回の作品はそのカオスと破綻に何らかの存在意義を感じさせるような内容で、それらをスリリングに楽しめるレベルまで消化できています。 危うさ、狂気、破綻。これらの要素を美しさへと転換する才能を持ったアーティストというのは極めて稀な存在。(例えばJaco PustriusやKeith Jarrettのような。危うさと破綻についてはBrad Mehldhauも近いものがありますが、彼の場合はストイックな哲学者タイプといった感じであり、狂気とはまたちょっと違う印象を受けます。)Terrassonは今後そういったレベルアーティストに追従できる可能性を持った数少ない一人だと僕は思っています。Keithの域まではまだまだですが、今後が非常に楽しみな個性派ピアニストなので是非是非チェックくださいませ。。
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