Joe Hendersonというのは、なんとも捉え所のないミュージシャン。エアの多い音色とか、あの独特の「うにょうにょ」したフレージングとか、苦手だったり嫌いだったりする人は少なからずいるんじゃないかと思います。僕も以前は全く理解できなくて毛嫌いしていたタイプなんですが、何かのきっかけで開眼して以来、その不思議な魅力にすっかりはまってしまい、抜け出せなくなってしまいました。きちんと聴き込むと、テナーサックスの木管楽器としての良い部分を鳴らしきった(あえてSolidな部分は殺しているんでしょう)すごく良い音をしていることや、細かい「うにょうにょ」フレージングも理論に基づいてきちんと丁寧に音を積んで構築されているということが理解できてくると思います。 そんなジョーヘンのもう一つの大きな魅力は、彼の素晴らしい作曲能力にあります。非常に斬新な響きが特徴である彼のオリジナル曲は、作られてから数十年を経た現在に於いてもなお色褪せることなく、ミュージシャン達の間でこぞって取り上げられるような存在になっています。今回ご紹介するのは、そんなジョーヘンのオリジナル曲をビッグバンドアレンジし、ジョーヘン本人及びオールスターメンバーのバンドが演奏するという、超豪華なアルバム、“Joe Henderson bigband”です。ビッグバンド用にアレンジしたことにより、原曲の良さがより引き立っているのではないでしょうか。メンバーについての説明は敢えて語るまでもない(と言うか、語ると長くなり過ぎる)ほどの名手ばかりなので割愛させて頂きます(笑) 壮大なスケールで自由奔放にテナーを吹きまくる御大をフィーチャーした@、音に厚みが出たことにより(特に低音部がイイ!)原曲の良さが更に引き出されたD、リズムレスになった後のSaxソリがたまらなくカッコイイFあたりが僕のオススメするベストテイクです。 音楽的に凄く斬新で硬派な内容を実践しつつも、キャッチーさを失わないということは素晴らしいことであると思います。ジョーヘンやビッグバンドの入門盤としても充分推薦できますし、コアなファンが聴いても非常に濃い内容で御満足頂けるでしょう。これは僕がこのコーナーでオススメしたいアルバムの鑑のような存在です。
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