空色勾玉
村娘狭也の幸せな日々に,影を落とすのは普の記憶‥‥「鬼」に追われた六歳の自分。十五になった祭の晩に,「鬼」はついに追いついた。〈 おまえは「闇」の氏族の巫女姫だ 〉 と告げられて,憧れの「輝」の宮に救いを求める狭也。だが,宮の神殿で縛められて夢を見ていた「輝」の末子,稚羽矢との出会いが,狭也の運命を大きく変えていく‥‥ |
白鳥異伝
遠子と小倶那は双子のように育った。都に出る日,小倶那は誓った‥‥必ず遠子のもとに帰ると。けれども小倶那は「大蛇の剣」の主として帰り,遠子の郷をその剣で焼き滅ぼしてしまった‥‥。 |
薄紅天女
東の坂東の地で,阿高と,同い年の叔父 藤太は双子のように十七まで育った。だがある夜,蝦夷たちが来て阿高に告げた‥‥あなたは私たちの巫女,明るい火の女神の生まれ変わりだ,と。母の面影に惹かれ蝦夷の国へ向かう阿高を,藤太と仲間たちは必死で追う。そして「私は阿高を捜しに来た」と語り,追跡に加わる都の少将坂上田村麻呂の真意は‥‥? |
風神秘抄 坂東武者の家に生まれた十六歳の草十郎は,腕は立つものの人とまじわることが苦手で,一人野山で笛を吹くことが多かった。平安末期,平治の乱に源氏方として加わり,源氏の御草司,義平を将として慕ったのもつかの間,敗走し京から落ち延びる途中で,草十郎は義平の弟,幼い源頼朝を助けて,一行から脱落する。そして草十郎が再び京に足を踏み入れた時には,義平は,獄門に首をさらされていた。絶望したそのとき,草十郎は,六条河原で死者の魂鎮めの舞を舞う少女,糸世に目を奪われる。彼女の舞には,不思議な力があった。引き寄せられるように,自分も笛を吹き始める草十郎。舞と笛は初めて出会い,光り輝く花吹雪がそそぎ,二人は互いに惹かれあう。だが,その場に,死者の魂を送り生者の運命をも変えうる強大な力が生じたことを,真に理解したのは糸世だけだった。ともに生きられる道をさぐる草十郎と糸世。ニ人の特異な力に気づき,自分の寿命を延ばすために利用しようとする時の上皇後白河。一方草十郎は,自分には笛の力だけでなく,「鳥の王」と言葉を交わすことができる異能が備わっていることに気づく‥‥。平安末期を舞台に,特異な芸能の力を持つ少年と少女の恋を描く,人気作家の最新作。 |