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ドクター・ヤンのお気に入りの本たち

伊坂幸太郎の作品たち


オーデュボンの祈り オーデュボンの祈り
伊坂幸太郎
新潮文庫(2000)

     コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は,気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている「荻島」には,妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家,「島の法律として」殺人を許された男,人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ,頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは,なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?


ラッシュライフ ラッシュライフ
伊坂幸太郎
新潮ミステリー倶楽部(2002)

     併走する五つの物語,交錯する十余の人生,バラバラ死体がくっついて歩き出すという奇抜な謎,そして,エッシャーの騙し絵のごとく鮮やかなラストの締めくくり。
     各紙誌で絶賛され,一躍伊坂幸太郎を有名にしたこの作品,その奇跡的とも言える絶妙の構成と才気溢れる謎が話題になりがちですが,読みどころは他にもあります。それは,群像劇としての,各エピソードの面白さです。出て来る人たちは,どちらかというと,あまりいい人生を歩んでいない人だったりします。再就職先の全然決まらない失業者だったり,泥棒だったり,修復不能な関係に悩む夫婦だったり —— 。そんな話にも関わらず,読後,必ず「人生,そんなに捨てたもんじゃない」と思えるはずです。思わずニンマリして,「自分も,もうちょっと頑張ってみようかな」と思えて来るはずです。それは,物語の力であり,小説を読む楽しみそのものです。
     伊坂マジックとでも言いたくなるこの感覚。是非じっくりと味わってみて下さい。


陽気なギャングが地球を回す 陽気なギャングが地球を回す
伊坂幸太郎
祥伝社 NON・NOVEL(2003)

      成瀬リーダーは嘘を見抜く名人,さらに天才スリ&演説の達人,紅一点は精確な体内時計の持ち主 —— 彼らは百発百中の銀行強盗だった‥‥‥はずが,そ日の仕事ヤマに思わぬ誤算が。逃走中に,同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯と遭遇。「売上」ごと車を横取りされたのだ。奪還に動くや,仲間の息子はいじめ事件に巻き込まれ,死体は出現,札付きのワルまで登場して,トラブルは連鎖した! 最後に笑うのはどっちだ!? ハイテンポな知恵比べが不況気分を吹っ飛ばす,都会派ギャング・サスペンス!

     ワタシ(Dr.YAN)が初めて触れた伊坂作品。きっかけは新聞紙上での書評記事だった。以来,伊坂幸太郎に首ったけだ。


重力ピエロ
重力ピエロ
伊坂幸太郎
新潮社(2003)

オーソドックス だけど古くない
地味で大人しい けどカッコイイ

「小説,まだまだいけるじゃん !
(担当者が思わず叫んだ一言)

     連続放火事件の現場に残された謎のグラフィティアート。無意味な言葉の羅列に見える落書きは,一体何を意味するのか? キーワードは,放火と落書きと遺伝子のルール。とある兄弟の物語。

     世に面白い小説は多々ありますが,本当に「新しい」ものはそうありません。奇をてらったり,変に前衛的な作品は,すぐに色あせてしまいます。もっとこう,根本的に今日的な,「同時代文学」が読みたいと,ずっと思っていました。そんな折り,預かった原稿を読みながら,僕は知らず快哉を叫んでいました。「なんだ,小説まだまだいけるじゃん ! 」と。気に入った箇所を,何度も読み返していました。誰かと感想を語り合えないことを,あれほど残念に思った夜はありません。それが,この『重力ピエロ』です。
     これは,小説の持つ面白さ・秘めたる力・無限の未来に改めて気付かせてくれた大切な作品です。だから,敢えて「是非に ! 」と申し上げます。とにかく読んでみて下さい。小説好きで良かった,と素直に喜べる瞬間に出会えることをお約束いたします。 担当編集者


アヒルと鴨のコインロッカー アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂幸太郎
東京創元社(2003)

     引っ越してきたアパートで,最初に出会ったのは黒猫,次が悪魔めいた長身の美青年。初対面だというのに,彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ち掛けてきた。彼の標的は —— たった一冊の広辞苑。僕は訪問販売の口車に乗せられ,危うく数十万円の教材を買いそうになった実績を持っているが,書店強盗は訪問販売とは訳が違う。しかし決行の夜,あろうことか僕はモデルガンを持って,書店の裏ロに立ってしまったのだ! 四散した断片が描き出す物語の全体像は? 注目の気鋭による清洌なミステリ。


チルドレン チルドレン
伊坂幸太郎
講談社(2004)
チルドレン(帯より)

こういう奇跡もあるんじゃないか?
まっとうさの「力」は,まだ有効かもしれない。
信じること,優しいこと,怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。
ばかばかしくて恰好よい。ファニーな「五つの奇跡」の物語
吉川英治文学新人賞作家,会心の受賞第一作 !


グラスホッパー グラスホッパー
伊坂幸太郎
角川書店(2004)

    「人は誰でも、死にたがっている」
    「世界は絶望と悲惨に塗れている」

    でも僕は戦おうと思うんだ。
    君との記憶だけを武器にして
    ——

    「おまえさ、
    人としじみのどっちが偉いか
    知ってるか?」

    「亡霊としての節度はないのか?
    コメディ?  シリアス?
    サスペンス?  オフビート?
    分類不能な「殺し屋小説」の誕生 !
    「僕は、君のために結構頑張ってるんじゃないかな」


死神の精度 死神の精度
伊坂幸太郎
文藝春秋(2005)

    俺が仕事をすると
    いつも降るんだ


    クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語

      j CDショップに異常に入りびたる
      k 苗字に町や市の名前がつかわれている
      l 受け答えが微妙にずれている
      m 素手で人に触ろうとしない
      n いつも雨にたたられている

    そんな人が近くにいたら死神かもしれません


魔王 魔王
伊坂幸太郎
講談社(2005)

    ある兄弟の孤独な闘い

    未来にあるのは、
    青空なのか、荒野なのか

    世の中の流れに立ち向かおうとした、兄弟の物語。

    政治家の映るテレビ画面の前で目を充血させ、必死に念を送る兄。
    山の中で一日中、呼吸だけを感じながら鳥の出現を待つ弟。
    入々の心をわし掴みにする若き政治家が、日本に選択を迫る時、
    長い考察の果てに、兄は答えを導き出し、弟の直観と呼応する。

    ひたひたと忍び寄る不穏と、
    青空を見上げる清々しさが共存する、
    圧倒的エンターテインメント !


砂漠
伊坂幸太郎
実業之日本社(2005)

砂漠に雪を降らせてみせよう !
ファン待望,著者 1 年半ぶりの書き下ろし長編 !
青春小説の新たな傑作が,いまここに誕生した ——

「大学の一年間なんてあっという間だ」
入学,一人暮らし,新しい友人,麻雀,合コン‥‥‥。
学生生活を楽しむ五人の大学生が,
社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス“で
超能力に遭遇し,不穏な犯罪者に翻弄され,
まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。

パワーみなぎる,誰も知らない青春小説 !

砂漠

終末のフール 終末のフール
伊坂幸太郎
集英社(2006)

絶望とかすかな希望
過去とかなわぬ未来

この命をあきらめない。
生きる道のあるかぎり。

世界が終わりを告げる前の人間群像。その瞬間をあなたは誰と迎えますか。

わたしは簡単には許さないですから(「終末のフール」静江60代)
子供を産んでればって後悔しないかなあ(「太陽のシール」富士夫30代)
どうして逃げてるのかな、悪くないのに(「籠城のビール」暁子10代)
恋愛ってのは都合よくはじまることもあるんだよ(「冬眠のガール」小松崎20代)
明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか? (「鋼鉄のウール」苗場30代)
俺は自分で納得するために復讐をした(「天体のヨール」矢部40代)
許しを乞う相手すら思い浮かばない(「演劇のオール」倫理子20代)
死ぬより怖いことはたくさんある(「深海のポール」土屋30代)

世界が終わる前の、叫びとため息。8つの物語。


陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂幸太郎
祥伝社 NON・NOVEL(2006)

〈著者のことば〉
前作「陽気なギャングが地球を回す』の続編です。四人の銀行強盗たちがまた、下らない会話をし、銀行を襲い、トラブルに首を突っ込んでいます。前作以上に、現実離れした内容になりましたが、細かいことは気にせずに楽しんでいただければ幸いです。
また、第一章に関しては、雑誌に掲載された短編四本を、長編の一部として大幅に変更した上で、組み込んでいます。雑誌掲載時に一度、お読みになっている方がいましたら、最初から改めて読んでいただければ、ありがたいです。

陽気なギャングの日常と襲撃

   

入間嘘発見器成瀬なるせが遭遇した刃物男騒動,演説の達入響野きょうのは「幻の女」を探し,正確無比な"体内時計"の持ち主雪子ゆきこは謎の招待券チケットの真意を追う。そして天才スリの久遠くおんは殴打される中年男に —— 史上最強の天才強盗ギャング 4 人組が巻き込まれたバラバラな事件トラブル。だが,華麗なる銀行襲撃の裏に突如浮上した「社長令嬢誘拐事件」と奇妙な連鎖を始め‥‥。絶品のプロット,会話,伏線が織りなす軽快サスペンス!  伊坂ブームの起爆剤にして,映画化で話題の「陽気なギャング」ここに待望の復活!


フィッシュストーリー

フィッシュストーリー
伊坂幸太郎
新潮社(2007)

小気味よい会話と伏線の妙が冴える
伊坂ワールドの饗宴





「なあ、この曲はちゃんと誰かに届いてるのかよ?」

売れないロックバンドが最後のレコーデングで叫んだ声が、時空を越えて奇蹟を起こす。

伊坂作品を彩る名脇役たちが巻き込まれる、新たな事件の数々 —— 。

「動物園のエンジン」
深夜の動物園で、毎晩のようにうつ伏せに寝ている謎の男。彼は、動物園に活気をもたらす「エンジン」のような存在だと言うのだが。

「フィッシュストーリー」
『僕の小説が魚だとしたら、その風呂敷と尾鰭の大きさに、海の魚も陸に上がって未来を語るに違いない』

「サクリファイス」
副業の探偵職で訪れた山間の村。行方不明の男を捜すうち、黒澤は古くから続く奇妙な風習に行き当たる。

「ポテチ」 (書き下ろし)
ニュートンに遅れること300年。万有引力の法則に気付いた空き巣の青年は、またしても新たな法則と事実を発見する。

【fish story】

@

ホラ話。大げさな話。作り話。釣り師が、自分の釣果を実際より誇張して言いがちなことに由来する。

A

「僕の孤独が魚だとしたら」という一節で始まる小説のタイトル。同様のフレーズは、「孤独」の部分の言葉を変えて、作中に何度か登場する。晩年は廃屋にこもり、壁に文章を書き続けたと言われる日本人作家の遺作。

B

三枚のアルバムを残して解散したロックバンドの、最後のアルバムに収録されている楽曲タイトル。間奏部分に、一分間に及ぶ無音部分があることで、その是非や意味合いについてが一部で話題となった。

C

この本のタイトル。ある日本人作家の13冊目の著作にあたるが、Aとの関係は不明。


ゴールデンスランバー
伊坂幸太郎
新潮社(2007)

伊坂的娯楽小説突抜頂点

首相暗殺の濡れ衣を着せられた男は、
巨大な陰謀から逃げ切ることができるのか?
2年ぶり1000枚直球勝負の書き下ろし大作 !

ゴールデンスランバー


    仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。誘る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた —— 。

    精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界 —— 、
    伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成    


【Golden Slumber】

@

golden
 1、黄金の、金の
 2、最高の、素晴らしい
slumber
 1、眠る、うとうとする(Vi.)
 2、眠り。特に、まどろみ、うたた寝を指す(n.)

A

イギリス、エリザベス朝の劇作家、トマス・デッカー(Thomas Dekker【1572?〜1632】)の手になる子守歌「Golden Slumbers Kiss Your Eyes」にある、印象的なフレーズ。『マザー・グース』にも収録されている。

Golden slumbers kiss your eyes,
Smiles awake you when you rise.
Sleep, pretty wantons, do not cry,
And I will sing a lullaby;
Rock them, rock them, lullaby.

Care is heavy, therefore sleep you;
You are care, and care must keep you.
Sleep, pretty wantons, do not cry,
And I will sng a lullaby;
Rock them, rock them, lullaby.

B

THE BEATLES のアルバム『ABBEY ROAD』(1969年発売)に収録されている楽曲タイトル。発売当時レコードだったこのアルバムは、B面の「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」から「THE END」までが壮大なメドレーとして構成されており、「GOLDEN SLUMBERS」は、そのメドレーの6曲目にあたる。ポール・マッカートニーが、父親の家に遊びに行った際、『マザー・グース』に載っている上記Aの童謡を見つけ、そこから生まれたと言われている。


モダンタイムス モダンタイムス
伊坂幸太郎
講談社(2008)

検索から、監視が始まる
漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品最長1200枚

岡本猛はいきなり現れて脅す。「勇気はあるか?
五反田正臣は警告する。「見て見ぬふりも勇気だ」
渡辺拓海は言う。「勇気は実家に忘れてきました」
大石倉之助は訝る。「ちょっと異常な気がします」
井坂好太郎は嘯く。「人生は要約できねえんだよ」
渡辺佳代子は怒る。「善悪なんて、見る角度次第」
永島丈は語る。「本当の英雄になってみたかった」


あるキング あるキング
伊坂幸太郎
徳間書店(2008)

天才はこうして生まれた
おまえは王になるためにこの世に生まれてきた
天才が同空間に存在するとき、周囲の人間は畏れ敬うのか、それとも ——
王になるべく運命づけられた男の物語

弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた山田王求おうく
"王が求め、王に求められる"ようにと名づけられたひとりの少年は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を背負い、野球選手になるべく育てられる。
期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常ともいえる情熱を彼にそそぐ。すべては「王」になるために —— 。
人気作家の新たなるファンタジーワールド。


SOSの猿 SOSの猿
伊坂幸太郎
中央公論新社(2009)

この物語が、誰かを救う

Save Our Souls  私 た ち の 魂 を 助 け て

ひきこもり青年の「悪魔祓い」を頼まれた男と、一瞬にして三〇〇億円の損失を出した株誤発注事故の原因を調査する男。そして、斉天大聖・孫悟空 —— 救いの物語をつくるのは、彼ら


オー!ファーザー オー! ファーザー
伊坂幸太郎
新潮社(2010)

家には、父親が四人いる!?

みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は、六人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない? いや、そうじゃないんだ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活して.いたいだけなのに。そして、今回、変な事件に巻き込まれて —— 。

連載終了から三年。伊坂幸太郎・第一期 の最後を飾る長編(詳しくは「あとがき」参照)が遂に登場!
えっ、これも伏線だったの?と、すべてが繋がる技の冴え。
人気作家の新たなるファンタジーワールド。


バイバイ、ブラックバード

バイバイ、ブラックバード
伊坂幸太郎
双葉社(2010)

1話が50人だけのために書かれた
「ゆうびん小説」が、いまあなたのもとに。

太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から
想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。


オー!ファーザー マリアビートル
伊坂幸太郎
角川書店(2010)

物騒な奴らが再びやって来た!
ねえ、世の中で正しいことって何だか分かる?
殺し屋のおじさん


元殺し屋の「木村」は、幼い息子に重傷を負わせた相手に復讐するため、東京発盛岡行きの東北新幹線〈はやて〉に乗り込む。狡猜な中学生「王子」。腕利きの二人組「蜜柑」&「檸檬」。ツキのない殺し屋「七尾」。彼らもそれぞれの思惑のもとに同じ新幹線に乗り込み物騒な男たちを乗せ、東京発の新幹線は、北を目指して疾走する!



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