共有結合


水素原子の場合を考えましょう。

水素原子は,最外殻はK殻,最外殻電子数は1でしたね。

Octet Theory で考えれば,水素は1価の陰イオンになりそうなものなのに
特別な事情で,1価の陽イオンになりやすいのでしたね。(例外的な物質)

さて,そういう水素原子が2個,接近して存在していると考えましょう。

H_&_H

それぞれの水素原子は,最外殻(K殻)に電子がもうひとつづつあれば
安定化できるのですから,電子を取り入れたがっています。

といって,2つの水素原子は,共に同じ境遇ですから,
どちらかが電子を譲ってあげる,というわけにはいきません。

そこで,2つの水素原子は,お互いの最外殻を重ね合わせ,自分の
最外殻電子の他に,相手の最外殻電子も自分の最外殻に置いてしまいます。

H2

こうなると,2つの水素原子は,共に,自分の最外殻に電子は2個ある
とみなすことができるようになり,安定化することになります。

そして,このとき,2個の最外殻電子は,
2つの水素原子に「共有」されていることになります。

さらに,この「共有された電子」から見ると,
2つの水素原子核は「まったく同じ」に見えることになります。

2つの水素原子核はそもそも同じものだし,
これらの電子と2つの原子核は「同じ距離」にあるのですから。

そのため,この「共有された電子」は,2つの原子核からの
クーロン力を受けることになります。

そうすると,左の原子核(+)←→共有された電子(-)←→右の原子核(+),という
電気的な結合が生じたことになり,2つの水素原子は「結合」します。

「共有された電子」は,常に2個で1組ですね。
ですから,これらを「共有電子対」といいます。

このようにして,
2つの原子核が共有電子対を仲立ちにしてクーロン力で結びつく結合
共有結合」といいます。

そして,共有結合した2つの水素原子は,「水素分子」を形成します。

2つの水素原子が共有結合で結びついて分子を作っているとき,これを

H:H(電子式)  H−H(構造式)  H2(分子式)

と書き表します。電子式の「:」は共有電子対を表しています。
構造式の「−」は「価標」といい,ここに共有結合がひとつできていることを示します。
分子式は,共有結合によって,2個の水素原子が結合していることを示します。

電子は,激しく「動きまわっている」ものでしたが,「共有電子対」になってしまうと,
2つの原子核からのクーロン力によって束縛されてしまうので,
電子殻上のどこへでもいける,というわけにはいかなくなり,
「最外殻が重なり合っているあたり」を中心として,動くようになります。


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