実験レポート「ろうそくの炎」

目的 材料 方法
  1. ろうそくに点火し,融けたロウを用いてろうそくを台に立てた。
  2. 炎に風が当たらないように注意しながら,ろうそくが灯っている状況を観察した。
    • ろうそくの棒体の最上部の様子,芯の様子。
    • 炎のようす。
  3. 「炎の下部(芯の周囲)」・「炎の明るく輝いている部分」・「明るい炎の直上部(輝く炎はない)」に,ガラス棒を差し入れ,ガラス棒に付着するものを調べた。
  4. 同様に割り箸を差し入れ(0.5秒程度),焦げ目の付き方を調べた。
  5. 灯っているろうそくを直射日光の下に置き,影の様子を観察した。
結果

  2. ろうそくの棒体最上部と芯,炎の様子

黄色に輝く炎の上端は,「縁」が
はっきりせず,徐々に薄くなって
消えていくように見える





      黄色に輝いている炎
   (炎全体の上部2/3くらい)


炎全体の下部1/3くらいまで芯
が入り込んでいて,炎の下縁か
ら円錐形に薄暗い部分がある

炎の下縁部は薄青色をしている













芯の先端は「黄色に輝く炎」の
中に入り込み,赤熱している

炎の下端より上の芯は黒く
炭化している

ろうそくの棒体の最上部は,
球面状に凹み,融けた液体の
ろうがたまっている





  3. 炎の各部に差し入れたガラス棒に付着したもの

→ 明るい炎の直上部(輝く炎はない) —— 何も付着しなかった。
     この部分には,ガラス棒に付着するような物質は存在
     しないと考えられる。







→ 炎の明るく輝いている部分 —— 黒くススが付着した。
     ガラス棒を差し入れたとき,黒煙が上がった。
     このことから,この部分には炭素の固体微粒子が
     存在すると考えられる。



→ 炎の下部(芯の周囲) —— 炎の縁のあたりにはススが付着
     し,「円錐形の薄暗い部分」では,無色の液体が付着
     した。
     ガラス棒を炎から取り出すと,この液体は無色(白)の
     固体となった。
     このことから,芯の周囲の「円錐形の薄暗い部分」には,
     気体のろう(パラフィン)が存在し,ガラス棒を差し入れた
     ことで,冷やされて凝結し,液体としてガラス棒に付着
     したと考えられる。


  4. 炎の各部に差し入れた割り箸の焦げ目のつき方

  明るい炎の直上部(輝く炎はない)―――→
強く焦げた。
この部分は(目に見える炎はないが)温度は一番
高いことがわかった。





      炎の明るく輝いている部分 ―――→
明るく輝いている部分のすぐ外側が焦げた。
明るく輝いている炎の内部でも,時間が少したつ
と焦げてきた。ここではススも付着して黒くなるが,
ススはふき取れるので,焦げ目とは区別できる。



          炎の下部(芯の周囲) ―――→
目に見えている炎のすぐ外側に少し焦げ目がつい
た。











          ← 炎上方の
            高温度の空気
            の上昇気流



     炎の影 →

 5. 灯っているろうそくを直射日光の下に置いた
  ときの影の様子


 写真でわかるように,「炎の明るく輝いている部分」が影を作っていた。

 「影」は,
  @「そこに光をさえぎるものがある」場合と,
  A「光を通すが密度の差があり,それによ
    って屈折率が異なる」場合,
に生じるのだから,「炎の明るく輝いている部分」には「光をさえぎるもの」があることがわかった。これは,「ガラス棒に付着したもの」の結果から考えた,「炎の明るく輝いている部分には炭素の固体微粒子が存在する」ことを裏付ける現象といえよう。
 また,炎上方の「影」は,そこに,炎の熱(炎の直上部・外周部の高温)により,「高温度の空気の上昇気流」が生じていて,そこで「密度の差」が生じ,周囲の空気とは「屈折率が異なる」状況となって,影を作っていると考えられる。


考察

   観察結果をもとにして,ろうそくの炎の各部分の温度分布と,そこに存在する物質を考えてみる。

明るい炎の直上部(輝く炎はない) —— 外炎
    最も温度が高い。
    ここで炭素と水素が空気中の酸素と酸化反応を起こし,大き
    な熱を発生していると考えられる。
    ここから明るい炎の外周部下側に向かって,温度が下がっ
    ていくことから,酸化反応を起こす炭素・水素の量が減少
    していくわけで,これは,炎内部にも上昇気流が生じ,炭
    素・水素の原子の多くは上部へ移動するからと考えられる。
炎の明るく輝いている部分 —— 内炎
    ここでは,気体になっていたろう(パラフィン)が,まわりの熱を
    受けて分解し,炭素原子(スス)・水素原子が生じていると考
    えられる。この炭素原子が,熱によって黄色の光を発している
    のが,「黄色く明るく輝く炎」であろう。
    この部分では「熱の発生」は起こっておらず,「熱」は,炎外周
    から供給されるので,温度は外周部よりずっと低いと考えられ
    る。
炎の下部(芯の周囲) —— 炎心
    ここには,「ガラス棒にろうが付着した」ことから,気体のろうが
    存在し,これは,芯を毛管現象によって上がってきた液体の
    ろうが,まわりの熱を受けて気化したものと考えられる。
    ここでは,ろう(パラフィン)が分解を起こすほどの温度には
    なっていないので,炭素原子の発光も起こらず,暗いのだと
    考えられる。

ろうそくの燃焼のメカニズム 図中,緑の矢印は「状態変化」を表し,
赤の矢印は「化学変化」を表している

 ろうそくの棒体の先端部は,球面上に凹み,液体のろうが溜まっている。 炎下端部の形に沿って熱が放射されているので,炎下端部の形に温度分布が起こり,その形にろうが融解して液体になる。

 液体のろうは毛管現象によって芯を上がり,炎心で芯の表面から気化する。ろうの融解は引き続いて起こるが,生じた液体のろうは順次芯を上がり,気化するので,棒体先端からあふれ出ることはない。

 気体のろうは,外炎から伝わってくる熱によって分解し,炭素原子・水素原子を生じる。この炭素原子が,熱によって黄色に発光するので,炭素原子が存在する部分(内炎)は黄色く明るく輝く。水素原子も熱によって発光するが,その光は目には見えにくい。

 炎の外側の空気中には酸素が存在し,これが,内炎からの炭素原子・水素原子と接触して結合する(酸化反応)。この反応は大きな熱を発生するので,この反応が起こっている外炎の部分が,最も高温となっている。外炎は黄色く明るく輝く内炎の外側の部分であり,光は発していないので,目には見えない。

 酸化により,炭素は酸素と結合して二酸化炭素となり,水素は酸素と結合して水(水蒸気)になる。
 二酸化炭素・水蒸気ともに,炎の熱による上昇気流に乗って空気中に拡散していく。

 芯の先端部は内炎中にあり,内炎の熱によって芯を作っているセルロースが分解して(芯先端部の赤熱がその現れ),炭素原子・水素原子・酸素原子となり,芯は炎心部の長さに保たれつつ,次第に短くなっていく。